常識を覆す、知的なスリルに酔いしれる!
この記事を書いたライター
川村 拓也 (かわむら たくや)
年齢: 38歳 職業: 起業家
スパイは紳士?常識破りのスパイ像に、思考が揺さぶられる!
「スパイは、紳士の仕事」―作中に登場する英国総領事の言葉だ。だが、柳広司氏の描くスパイ像は、そんな甘い幻想を容赦なく打ち砕く。彼らは、国家への忠誠心や愛国心といった虚構に縛られない、冷徹なまでの現実主義者たちだ。結城中佐率いる謎の諜報組織「D機関」に所属するスパイたちは、常人離れした知性と精神力で、世界を舞台に暗躍する。
大戦前夜、知の闘いが始まる!究極のスパイ・ミステリー、ここに誕生!
『ジョーカー・ゲーム』(角川文庫)は、2008年に刊行され、吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞した、究極のスパイ・ミステリーだ。第二次世界大戦前夜、陸軍内に設立されたD機関。そこで訓練を受ける若き精鋭たちは、「死ぬな、殺すな、とらわれるな」という掟の下、常識を覆す過酷な訓練に身を投じていく。
本書は、D機関の設立から、世界各地で繰り広げられるスパイたちの活躍を描く連作短編集だ。それぞれの物語は独立しているものの、D機関という共通項と、結城中佐という謎めいた人物の存在が、全体を貫く緊張感と重厚さを生み出している。
起業家も共感!極限状況でこそ光る、スパイたちの"思考力"と"柔軟性"
私自身、起業家として、常に変化する状況の中で、冷静な判断と大胆な行動が求められる。本書を読み進める中で、D機関のスパイたちが持つ、いかなる状況にも対応できる柔軟性と、常識にとらわれない思考力に、深く感銘を受けた。
あなたは結城中佐の掌の上で踊る…緻密なプロットに、翻弄される快感!
本書の魅力は、何と言ってもその緻密なプロット構成と、予測不能な展開だ。例えば、「ジョーカー・ゲーム」で描かれる二重スパイ事件では、主人公が窮地に追い込まれる度に、結城中佐が仕掛けた驚くべき伏線が明らかになっていく。読者は、まるでチェス盤上の駒のように翻弄され、最後の最後まで目の離せないスリルを味わうことになるだろう。
"とらわれるな" 何ものにも縛られない生き方とは? 深遠なテーマに、心が震える!
特に印象的なのは、結城中佐がスパイの心得として語る、「とらわれるな」という言葉だ。
何かにとらわれて生きることは容易だ。だが、それは自分の目で世界を見る責任を放棄することだ。自分自身であることを放棄することだ
この言葉は、スパイという特殊な任務に携わる者だけでなく、現代社会を生きる我々すべてに共通する教訓を含んでいる。既成概念や固定観念に囚われず、常に自分の頭で考え、行動することの重要性を改めて認識させられた。
歴史好き、ビジネスパーソン必読!知的興奮とスリルが止まらない!
本書は、スパイ小説の枠を超えた、知的興奮と深遠なテーマ性に満ちた傑作だ。歴史好きはもちろん、変化の激しい現代社会を生き抜くためのヒントを求めるビジネスパーソンにも、ぜひおすすめしたい一冊である。