老いぼれには刺激が強すぎたかな
この記事を書いたライター
小林 一郎 (こばやし いちろう)
年齢: 68歳 職業: 定年退職者
定年退職後に時間ができたことをきっかけに読書に目覚めた元会社員です。長年の人生経験をもとに、ノンフィクションや歴史小説、自己啓発書などを中心にレビューを行います。彼のレビューは、人生の知恵や教訓を交えた深い洞察が特徴で、幅広い年齢層の読者に支持されています。
ハサミが奏でる少女たちの鎮魂歌
『ハサミ男』は1999年に講談社ノベルスから刊行されたミステリー小説だ。東京を舞台に、女子高生を絞殺し、のどにハサミを突き刺すという猟奇的な連続殺人事件を追う物語だ。
年老いた心に突き刺さる残酷な真実
正直に言って、この小説は私のような老人には刺激が強すぎたかもしれない。グロテスクな描写も少なくないし、登場人物たちの歪んだ心理や屈折した人間関係が赤裸々に描かれている。
しかし、それでもページを繰る手が止まらなかったのは、緻密に構成されたプロットと、先の読めない展開の面白さ、そして何よりも、語り手の正体という最大の謎に惹きつけられたからだ。
猟奇殺人鬼の告白 - その恐るべき二重性
この小説の語り手は、なんとハサミ男自身なのだ。彼は自分の犯行について淡々と語りながら、同時に別の女子高生をつけ狙い、綿密な調査を進めている。語り手の冷静沈着な語り口と残虐な犯行とのギャップが、なんとも不気味で、ゾッとするような読後感を与えてくれる。彼はなぜ少女たちを殺すのか。その真意は最後までわからない。
死は誰かの意思なのか? 脳裏に焼き付く言葉
特に印象に残っているのは、語り手が医師と呼ぶ謎の人物との会話だ。「あらゆる死は自殺である」という医師の言葉は、いまだに私の頭から離れない。本当にそうなのだろうか。
あなたはハサミ男の真実を見抜けるか?
この小説は、ミステリー好きはもちろんのこと、人間の心の奥底をのぞきみたいという好奇心旺盛な若い読者にもおすすめだ。ただし、心臓の弱い人は要注意だね。