諦めない心、自然の力、そして人の温かさ ― 読んだ後、私はリンゴの木に話しかけたくなりました。
この記事を書いたライター
山田 純 (やまだ じゅん)
年齢: 35歳 職業: 書店員
一冊の本が心を揺さぶる
今日ご紹介するのは、『奇跡のリンゴ 「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録』。
この本を読み終えた時、私は静かな感動に包まれ、「こんなにも一冊の本に心を揺さぶられることがあるのか」と深く感じ入りました。
「絶対不可能」を覆した農家の物語
『奇跡のリンゴ 「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録』は、2008年に幻冬舎から出版されたノンフィクション作品です。著者は石川拓治さん。NHKのドキュメンタリー番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」で紹介され大きな反響を呼んだ、リンゴ農家・木村秋則さんの半生を描いています。
農薬や肥料を使わずにリンゴを育てるという、当時誰もが「絶対不可能」だと信じていた夢を実現するために、木村さんがどれほどの苦労と挫折を経験してきたのか。自然とどのように向き合い、そして周りの人々に支えられてきたのか。著者の石川さんは、緻密な取材と丁寧な筆致で、木村さんの壮絶な人生を描き出しています。
自然と人間の関係を見つめ直す
この本を読んで、私はまず、木村さんの諦めない心に深く感銘を受けました。何年もの間、リンゴの実がならない状況が続いても、周囲の人から批判され、生活が困窮しても、木村さんは決して諦めませんでした。その強い意志と行動力は、私たちに大きな勇気を与えてくれます。
そして、木村さんが経験した数々の失敗と試行錯誤を通して、改めて自然の奥深さと複雑さを実感しました。自然は人間の思い通りになるものではありません。自然の摂理を理解し、謙虚な気持ちで自然と向き合っていくことの大切さを、木村さんの生き様を通して改めて教えられました。
詳細な描写と木村さんの言葉の力
この本の魅力は、何と言っても木村さんの生き様を鮮やかに描き出す、著者の石川さんの筆力にあります。木村さんがリンゴの木と対話する場面や、土壌の温度を測る場面、そして家族とのやり取りなど、細部まで丁寧に描写することで、読者はまるで木村さんと一緒にリンゴ畑にいるような感覚を味わえます。
そして、木村さんの言葉の力もこの本の大きな魅力です。
「人間に出来ることなんて、そんなにたいしたことじゃないんだよ。みんなは、木村はよく頑張ったって言うけどさ、私じゃない、リンゴの木が頑張ったんだよ。」
この言葉には、木村さんの自然に対する深い愛情と畏敬の念が込められています。
すべての人に読んでほしい一冊
この本は、農業に関心のある方だけでなく、人生に迷ったり悩んだりしているすべての人に読んでいただきたい一冊です。木村さんの諦めない心、自然と向き合う姿勢、そして周りの人々との温かい交流は、きっと読者の心に響き、生きる希望を与えてくれるはずです。
私も、この本を読んだ後、近所のリンゴの木に話しかけたくなりました。そして、木村さんの作ったリンゴを、心から感謝して味わってみたいと思いました。